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必見コラム「企業が生きる知恵」


  ブランド構築

投稿日 2009/08/27

不況でも高額商品は売れる!!

~価値感で納得してもらうセールスアプローチ

あるメディアで、これからのマーケティング(売れる仕組み)を次のように語っていました。

「お店をオープンしてれば、誰かが買いにくるだろうというのは古い考え方です。
新しい(マーケティングの)世界では、情報を欲している人を見つけ、
惜しみなく情報を与えることで、その方にお客様になっていただくのです。」

モノ余りの時代では、まず情報を提供しなければ、お客様は商品やサービスに興味を
示しません。

では不景気で所得が減り、お手頃価格以外の商品購入に二の足を踏んでいる消費者に

このマーケティング手法は当てはまるのでしょうか?

今月号では、高額商品が売れないのは、本当に景気が理由なのか?

その真相を海外で日本人が免税店としてよく訪れる会社DFSから、
ブランドを売るためのマーケティング手法で解説したいと思います。

皆さんも一度は海外旅行で訪れたことがあるDFS(デューティーフリーショッパー
ズ)。

この会社は本社を香港におき、
米国サンフランシスコと香港でマーチャンダイズ(商品調達)、
ファイナンス、及びITをシンガポールで行っているグローバル企業でもあります。

同社は、世界最高のラグジャリーブランドリテーラーになることをミッションに、
現在世界13の店舗でゴージャスなブランド品を展開しているのですが、
実はこの会社、株主はあのLVのモノグラムで有名なルイヴィトンを有するLVMH
(モエ・ヘネシー・ルイヴィトン社)が
多くの株式を持つ会社なのです。

なぜLVMHがDFSの株式をこんなにも取得しているのか?

DFSには、高額商品を買いたくなる巧みなビジネスモデル(儲かる仕組み)が構築
できるとLVMHは確信したからです。

高額商品を売りにすると、ビジネスの上で何が困るか?というと、売上が伸びないこ
とです。

それはたとえ富裕層であるお得意さんがいても、同じです。

なぜなら、高額商品には次に挙げる2つの特徴があるのです。

1・高価格帯なので買うことに決断が必要・・・価格が一般価格の10倍はする

2・商品の使用用途が限定される・・・冠婚葬祭ニーズつまりハレの時用途が多い

LVMHは商品が持つこれらの特徴を分析し、
そのイメージを維持しながらも売上げを伸ばす方法を考え、
その結果セレクティブマーケティングという手法を確立するのでした。

セレクティブマーケティングとは、分かりやすく言うと
「対象とする顧客に最も適切なメッセージを、お店の買い物を通じて感じてもらい、
欲しくなる気持ちになってもらう」手法です。

もしこの手法を実践すれば
”顧客が財布などのベーシックで値ごろな価格帯商品を欲しくなり、購買頻度がアッ
プしても、
 ブランドのイメージは大衆化しない”ようになります。

LVMHは、DFSを買収することで、この手法を次の3つのステップで現場に導入
しました。

1・お得感で客数を増やす
・・・安いというお得感では、ブランドイメージが崩れるため、DFSの特徴である
免税価格という“お得感”で来店動機をアップ

2・お得感を幸福感に変える
・・・ブランド店舗で非日常販促を行い、ブランドを持つ幸福感を来店客に体感して
もらう
例:エルメスのスカーフ試着教室や、ブルガリ125周年コレクションでシャンペン&
ショコラサービスなど

3・幸福感を価値感に変える
・・・来店客は、各店舗でそれぞれのブランドの価格とその価値を値踏みし始めま
す。
その価値感の結論は、高額商品だから長く使いたい、だからベーシックで長持ちする
商品を購入した方がよい
その結果、多くの人が知っているブランドルイヴィトンに最も価値があると納得する

少し前の数字ですが2006年、ルイヴィトンは一店舗30億円を売上げ、これは他ブラン
ドの3倍~10倍です。

この数字は、同社がベーシックからトレンドまでを扱い、広範囲の顧客に向けて、
ブランドイメージを発信し、それがうまくいったことの証だと言えるでしょう。

不況に、顧客に喜んでもらう為には、高額商品を扱う場合でも”お得感”が不可欠で
す。
そして、その”お得感”をセレクティブマーケティングにより幸福感に変え、
お客さんが価値感にまで行き着いたとすれば、きっと高額商品に納得するのです。

LVMH社は、DFSの特徴を活かし、各売場から適切なメッセージを発信すること
で、
同社の稼ぎ頭であるルイヴィトンの値ごろでベーシック定番商品にお客さんが集まる
ようにして、
欠品ロスと無駄な在庫が発生しない利益を生み続ける仕組みを構築しました。

皆さんがもし高額商品を扱っているなら、この事例のように、
最後に多くのお客さんが値ごろな定番商品に納得し、それを買いたくなるような仕組
みが必要です。

その為に必須ともいえる3つの黄金律を次に挙げてみましょう。

1・サービス
・お得感でお客さんを呼ぶ 価格以外でお得感・・時間、健康、環境。

2・こだわり
・これが、うちの提供する商品やサービスの売りだ!といえる要素 
例えば、LVの財布は、紙幣を入れやすいよう間口を手作業で折り返している

3・イメージ
・商品が高額である理由を、販売員やPOPで顧客が納得いくように説明し、商品が
持つイメージをつくりあげる
例えば、商品が高額な理由は、ブランドに伝統があり、
    それはこれら商品を支える職人が創造性・芸術性を持ち、
    長期の使用に耐えうるベーシックで定番商品をつくりだしたから、と説明す


最後に一度上記3つの黄金律を、皆さんも今の会社にあるものの中から当てはめてみ
ましょう。

もし皆さんが高額商品を売りにしていなくとも、
不況下にお得感だけでなく、それを幸福感、価値感に変える現場を作り出してみてく
ださい。

そうすれば、先にあげた3つの黄金律は、
まさに不況が教えてくれる”ブランド構築へ向けた~ぶれない経営~”の道しるべと
なるでしょう。




関連URL

■ LVMHグループHP  http://www.lvmh.co.jp/index.html


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